2013/07/19

翼-Ⅵ-13=47

B(翼持つ息子) ……何か考え事でも……

A(職人である父) ……。

B(翼持つ息子) 僕の翼のことですか?

A(職人である父) 違う。

B(翼持つ息子) 否定しなくてもいいじゃないですか。

A(職人である父) 違うから違うと言っとる。

B(翼持つ息子) ……。

A(職人である父) よし、完成だ! どりゃどりゃ、ふふふ。いい感じだな。これで今年の鳥人間コンテストも……

B(翼持つ息子) そうですね、この雄姿を琵琶湖のみなもに……って、そうじゃないでしょ! この迷宮からの脱出でしょう、脱出。

A(職人である父) そうじゃった。よし、翼は完璧だ。無茶せんかぎり、どこまでも飛んでゆけることだろう。

B(翼持つ息子) でも父さん、どこへ向かっていけばいいんですか?

A(職人である父) うん? そうだな……

B(翼持つ息子) ……太陽を目印に飛んでいけばいいんじゃないでしょうか?

A(職人である父) そうだ! それがいい。我が息子ながら感心するわ。うん、海の上でまわりに陸が見えなくなっても、それなら飛んでゆける。

B(翼持つ息子) では、太陽を目指して飛んでいけばいいですね。

A(職人である父) うむ。まあどこに着こうが、私の名前を出せば保護してくれるだろう。

B(翼持つ息子) 本当ですか?

A(職人である父) あなどっちゃいかんよ。わしのこの腕は引く手あまたなんじゃよ? 元々ミノス王にしてもこの腕に惚れて、わしを召し抱えたんじゃから。

B(翼持つ息子) そうなんですか?

A(職人である父) ああ。わしは元々アテナイ出身じゃ。アテナイを追放されて、それをひろってくれたのがミノス王というわけじゃ。

B(翼持つ息子) どうして追放されたんですか?

A(職人である父) ドキッ! いや、それは、まあいろいろと訳ありで。そんなに聞きたい? 長い話だし、芝居も長くなるよ。

B(翼持つ息子) 不名誉なことなんですね? 神殿に立ちションしたとか…

A(職人である父) ああ……不名誉なことだ。

B(翼持つ息子) やっぱり…

A(職人である父) 私は弟子の一人を殺した。

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